元Wine Advocate誌のレビュワーで、現在は自身のVinous(ヴィナス)を運営するアントニオ・ガッローニがInternational Wine Cellar(IWC)を吸収合併すると発表しました(Vinous To Acquire Stephen Tanzer)。

ステファン・タンザーが主宰するIWCは1985年に創刊された歴史ある雑誌。Wine Advocate誌やWine Spectator誌などと同様、100点満点でレイティングを付けています。近年点数がインフレ気味のWine Advocate誌などと比べ、抑えた点数を付けており、ワインのプロには高く評価されています。また、濃くて味が強いワインに高い点数がつきがちな他誌と比べて、デリケートな味わいを重要視しているとも言われています。

一方、ヴィナスは2013年2月にガッローニがWine Advocate誌をやめて作ったメディア。紙の雑誌は発行せず、ネット上の発信(有料モデル)だけを行っています。元々イタリアのワインのレビューから2004年にWine Advocate誌に入ったガッローニですが、Wine Advocate時代の終盤はカリフォルニアワインも担当。レビューの信頼性は高く評価されていました。特に、ピノ・ノワールなどはパーカーのレビューよりもガッローニを評価する人が多かったように感じます。

今回の吸収合併後は、IWCのコンテンツ(14万5000のレビューと500本の記事)はすべてヴィナスのサイトに掲載されます(11月末の予定)。タンザーを初めとするIWCのレビュワーはヴィナスの編集チームに加わり、タンザーが編集長になります。カリフォルニアではタンザーがナパの担当になり、IWCから移ったジョシュ・レイノルズがパソ・ロブレスとサンタ・ルシア・ハイランズの担当になります。ちなみにブルゴーニュはガッローニとタンザーが2人で担当することになるようです。

今回の合併、やや旧態依然のメディアといった感があったIWCにとっては、新しい技術の元でコンテンツが生かされるメリットがあり、ヴィナスにとっては、「歴史」が手に入れられるというメリットがあります。比較的高年齢層に支持されるIWCと若い世代に人気があると言われるヴィナス。どちらもプロの支持が高いという点は共通なので、両者にとって、プラスになるのではないかと思います。

気になるのは今後のレイティングがどうなるかです。IWC基準だと、今のヴィナスの点数よりは低くなってくるでしょう。おそらく、コンシューマへの「受け」を意識するならば、ある程度高得点に振る必要はあると思いますが、タイザーがそれを是とするでしょうか。

下のビデオは今回とは関係ありませんが、ガッローニが出ているもの。