ハーラン・エステートのオーナー、ビル・ハーラン氏の長男であるウィル・ハーラン氏がハーランの名代としては初来日をし、エステート・ディレクターのドン・ウィーバー氏とセミナーを開催しました。ドン・ウィーバー氏は2013年に続いての来日となります。

過去のハーラン・セミナーについては以下の記事をご参照ください。
Harlan EstateオーナーBill Harlan氏来日記念セミナー
ハーラン・エステートの4ヴィンテージを試飲して感じたこと

ウィル・ハーラン氏
右がウィル・ハーラン氏、左がドン・ウィーバー氏

ウィル・ハーラン氏は1987年の生まれ。デューク大学を卒業後IT系の企業を立ち上げていましたが、ファミリービジネスのパッションを感じてハーラン・エステートの後を継ぐ決意をしたそうです。ビル・ハーラン氏は常々「200年計画」としてワイナリーを家族のビジネスとして永続させていきたい旨を表明していましたから、その意向に沿ったものと言えるでしょう。父親についてはメンターであり、共に学んでいると、帝王学を施している様子が伺えます。ワイナリーの今後についても、大きく何かを変えるということはなく、より土地を学んで漸進的によくしていくつもりであると言っていました。

またドン・ウィーバー氏からはワイナリー周りの写真を使って、畑の特徴などの説明がありました。

ビル・ハーラン氏が故ロバート・モンダヴィとフランスの銘醸畑を回って、いいワインを作るためにはヒルサイドの畑でないといけないと思ったという話は有名ですが、ただ、斜面というだけでなく非常に多様な畑であることが説明されました。

例えば、畑の標高は低いところで65mですが、一番高いところは374mにも達しています。また、単調な山の斜面というより丘の上に近い立地であり、斜面の向きも南だったり東だったり西だったりと様々です。

ワイナリーの建物よりも東側は火山性の土壌であるのに対し、西側は海洋堆積物の土壌になっています。

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下にあるのがマーサズ・ビンヤード、奥のユーカリの樹も見える

この写真はナパの霧の雰囲気が分かるとともに、下にハイツのマーサズ・ビンヤードとその周囲のユーカリが見える点でも面白い写真だと思います。

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和の雰囲気を持つゲストルーム

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さて、今回の試飲は2011年のハーラン・エステートとセカンド・ワインのメイデン、それからバックヴィンテージとして2006年と2007年のハーラン・エステートが供されました。

2011年のハーランとメイデンは6月に国内出荷が始まる予定。メイデンは他国には輸出されていないとのことで、日本市場を大事にしていることが分かります。

2011年はナパとしては異例に雨が多く、気温が低い年で、通常は2000ケースくらい作るハーラン・エステートをこの年は850ケースしか作らなかったとのことです。

2011年のメイデンは、今飲んでおいしいワイン。もちろん若くてタンニンも強いですが、とてもアロマティックで酸が豊かなワインです。いわゆるナパのカベルネ・ソーヴィニヨンのイメージとはちょっと違うかもしれません(なお、畑の植樹比率はカベルネ・ソーヴィニヨンが70%でメルローが20%、カベルネ・フランが8%、プティ・ヴェルドが2%)。

2011年のハーラン・エステートはWine Advocate誌のレイティングが93点と、このワイナリーにしては低かったのですが、予想以上にいいワインでした。確かにほかのヴィンテージと比べるとおとなしめの味わいかもしれませんが、エレガントであり、ビロードのような舌触りはハーランならではのもの。むしろほかのヴィンテージよりも早い段階から美味しく飲めるワインかもしれません。とてもなめらかで重さを感じないワインでした。以前に試飲したものだと2005年の印象と似ているように思います。

2006年のハーラン・エステートは4年前にも試飲していますが、強さと美しさを兼ね備えた素晴らしいワイン。特に余韻の長さは驚くほどでした。すべてが高レベルでまとまっている印象。

最後は2007年のハーラン・エステート。Wine Advocate誌では100点がついているワインです。非常にスムーズなワインですが、今回の試飲では強さや余韻の点で2006年にちょっと負けているような気がしました。閉じている時期だったのかもしれません。以前のセミナーでドン・ウィーバー氏は「6~8年で一回閉じることがある」と言っていましたので、そういうタイミングだった可能性が高いと思います。

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ハーランのボトルを持って

最後に余談ですが、ウィル・ハーラン氏が日本に着いてからこのセミナーまで1日足らずだったのですが、その間に既にラーメンを2回食べていたとのこと。どんなラーメンが好きなのか気になります。