オーベール(Aubert)の「ちょい古」2009年のワインを試飲する機会をいただきました。ラインナップはシャルドネがソノマ・コースト、ハイド(Larry Hyde & Sons Vineyard)、UV-SL、ローレン(Lauren)の4種。ピノ・ノワールがUV、UV-SL、リッチー(Ritchie)の3種です。

Aubert
畑の名前はラベルの左下に薄く書かれているだけなので、よく見ないと違いがわかりません。

以前2011年のワインを試飲したときは、全般にピノ・ノワールよりもシャルドネがよく、中でもローレンは一頭地を抜くに感じました。

少し熟成が入ってきたこのヴィンテージはどうでしょうか。

【シャルドネ】
・ソノマ・コースト
 蜜の香り。パイナップル、オレンジ、奥ゆかしい酸、アフターにかすかに苦味。
 予想よりずっとよく、ちょっと驚きました。主催者によるとソノマ・コーストはリッチーのブドウが結構はいっているのでリッチーに味わいが似ているとのこと。

・ハイド
 やや閉じ気味だが、バランスよい。ソノマ・コーストと比べるとトロピカルフルーツの味わいは少なめ。時間が立つとだんだん開いてきた。
 主催者によると、ハイドは他のワイナリーが作ってもハイドの味になるので、わざわざオーベールで買う意味はあまりないのかも、とのこと。一般的なシャルドネのレベルで評すれば、非常に上のワインだが、オーベールの中ではちょっと埋没気味かも。

・UV-SL
 ソノマ・コーストやハイドと比べ明らかに濃い色調。はちみつのような甘さ。酸はおだやかでまるでデザートワインを飲んでいるかのよう。甘露という言葉が似合うワイン。
 アルコール度数15.8と一番高く、一般的なシャルドネの範疇からははずれてしまいそうなほどの甘みを感じました。実際に残糖があってこう感じるのか、アルコール度数の高さなどからこう感じるのかは分かりません。1本飲んだら飲み疲れてしまうかもしれませんが、グラスで1~2杯だけ飲むなら、とても魅力的なワイン。

・ローレン
 4本のシャルドネの中では一番酸を強く感じる。逆にフルーツの味わいは抑えめだが、時間が経つにつれ、だんだんいろいろな要素が浮かび上がってくる。
 UV-SLで驚いた後だからかもしれませんが、以前試飲したときのような圧倒的な美味しさではなく、じわじわ美味しくなってくる感じがしました。さすがにレベルは高いですが、期待値が高すぎたので、若干肩透かしだったかも。

さて、シャルドネで熟成を感じたかという点ですが、ちょっと微妙でした。ハイドやローレンで見られたような味わいの落ち着きは時間が経ったことによって起こったものかもしれませんが、現段階ではこの後、熟成してさらに魅力を増していくかどうかは分かりません。ひねた味わいが出てくる前に飲んだ方がオーベールらしく楽しめるのかもしれません。

【ピノ・ノワール】
・UV
 色はかすかに褐色が入ってきていて熟成を感じる。酸は比較的強め。赤系のフルーツ。
 ピノ・ノワールは予想よりも熟成が始まって来ていました。いい感じに熟成していきそうな雰囲気。

・UV-SL
 フランボワーズ、ストロベリーなど赤系のフルーツの風味が豊か。シルキーでスムーズ。
 UVほどではないですが、これも少し熟成を感じます。ただ、熟成しなくても今の段階でとても美味しいです。UV-SLすごい。

・リッチー
 3つのピノ・ノワールの中で、これだけは赤系の果実に加え、ブルーベリーのような青系の果実の味わいも感じる。スパイスも。
 骨太の味わいはカレラ・クローンによるものでしょうか。今現在の魅力はUV-SLにゆずりますが、ポテンシャルを感じるワインでした。

ピノ・ノワールはシャルドネと比べて、熟成の方向性が少し見えている感じがしました。このままもう5~10年ほど進むとかなりいい感じになってきそうな気がします。

また、シャルドネのソノマ・コーストのレベルの高さにはびっくり。これは日本でもそこまで高くないので、オーベールの入門用としては最適だと思います。


それと今回はやっぱりUV-SLですね。シャルドネもピノ・ノワールも素晴らしいワインでした。太平洋にかなり近い涼しいところの畑だそうですが、ソノマ・コーストの奥深さを感じます。