さて、前編はカルトワイン人気が高まりつつあった1990年代前半に、その畑の味を引き出すこと、すなわちいわゆるテロワールを重視するリトライが生き残ってきたかという質問で終わっていました。

その答えとなるキーワードは「ソムリエ」。パーカーやWine Spectatorがいかに濃いワインばかりに高得点をつけていても、レストランで実際に客にワインを提供するソムリエは、それぞれの尺度や好みを持ってワインを客に薦めます。そして、レストランですから、濃いワインよりもそこの料理に合うワインというのが大事になります。そういったソムリエの現場においては、リトライのようなワインが支持される層があったわけです。

そして2005年ころから、米国全体の傾向も少しずつ変わってきました。その理由は定かではないのですが、例えば「濃いだけのワインが10年くらいたって飲んでも、期待したような熟成をあまりしていない」ことがったりとか、新世代のワインメーカーがナパ以外の地域で次々と登場したり、といったことがあったのではないかとレモン兄さんは考えています。

2008年にいわゆるリーマン・ショックが起こり、米国全体が不景気になったのも影響しました。パーカーが100点をつけたワインでさえ売れなくなり、ワインメーカーも点数を追うことよりも、違う方向性を模索するようになったからです。

その後、2010年をすぎて、サンフランシスコ・クロニクルにいたジョン・ボネが「ニュー・カリフォルニア」を著すことで、そういったムーブメントがさらに形になって今に至ります。特に、1990年代から、「ニュー・カリフォルニア」のスタイルを続けてきたテッド・レモン兄さんは、若いワインメーカーのメンター的な役割も果たすようになっています。

さて、いよいよ試飲です。

畑の説明をするテッド・レモン


今回は、2014年のシャルドネが1種に2013年のピノ・ノワールが5種、そして2009年のピノ・ノワール ピボット・ヴィンヤード(Pivot)という7種類でした。個人的にはシャルドネのティエリオットあたりもすごくいいと思うのでシャルドネ1種がちょっとさびしかったのですが、限られた時間でリトライのテロワール表現を味わうための苦肉の選択だったのでしょう。

試飲ワイン

まずはチャールズ・ハインツのシャルドネです。

レモンやオレンジなどのさわやかな柑橘系の味わいを第一に感じますが、ナッツのような風味もあり、重厚的で複雑なワインです。すごく余韻も長く、素晴らしいシャルドネです。

チャールズ・ハインツの畑は1983年に植樹されており、樹齢約30年とちょうどいいところです。軽い西斜面になっています。リトライでは1994年から同じ7列のブドウを得ており、そのブロックだけは有機栽培を実践しています。新樽率は25%。野生酵母を使い、マロラクティック発酵も自然に行っています。このあたりの作り方は基本的には手を加えないことを主眼にしており、どのワインもほぼ同じです。

Littorai

最後まで書いていると夜が明けてしまいそうなので、今日はここまで。ピノ・ノワールの試飲は今度こそ次回にお伝えします。